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第101話 茨の冠、情と虚無、化物の歌(後半)

last update 게시일: 2026-01-07 06:07:52

 なぜか、わたくしの高笑いで……ローラント殿の動きが、わずかに鈍る。

 よくわからないけど、効いてるわっ!

「あなた、自分が何をしたか分かってますの!? ヒュプシュ卿を傷つけ、殿下を悲しませ、あまつさえ、“わたくしのイヅル”にまで手を出すなんて! 万死に値しますわよ!」

「それがなにか? 私は、情を断ち切ったのです。主君への敬愛も、友情も、貴女様への……思慕も。ハンノキの王への恩義のために。勝利のために」

「バカおっしゃい! 何が勝利よ! 何が『情を断つ』よ!」

 わたくしは、扇をバシッと閉じて、彼を指さした。

「“真の己”ですって! 情を持たないことが? 違うわ、あなたは空回りばかりしているけど、いつも真っすぐで……それこそが、本当のあなたなんじゃなくて? 剣術を鈍らせるほどの、優しさこそが!」

「だとするならば、その“本当のローラント”という
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    「……ふう」 シートに身を沈める。どっと、ローラントを疲労感が襲った。 御者が鞭を振るう音。再び馬車に乗り込めば、ジャンジャックが気だるげにページをめくっていた。 遠ざかる、王都。 遠ざかる、かつての栄光と罪の場所。「……終わったか」「ええ。……心残りがないとは言いませんが」「まあ、そうだろうな。心残りは、たくさんあるに越したことはない」「……そうでしょうか?」「若いうちから、心残りを消すことをするな。まだ早い」「先ほどからなんですか! 俺とジャンジャック殿、そこまで年齢が違うとは思いませんが!?」 なぜ、さほど歳の変わらない相手に、若造扱いされているのか、ローラントは不思議で仕方がなかった。 年上風を吹かせてくる男というのは、騎士には珍しくもないが、ジャンジャックの態度は妙に鼻につく。「気を遣ったつもりなのだがな。小生が知らせていなければ、見送りもいないぞ?」「それはっ! 確かに。……ありがとうございます」「素直でよろしい。先ほどより、顔つきがマシになったじゃないか」 ローラントに、勝ち目はないらしかった。どうにも分が悪い。「そう、ですね。なんというか……不思議なことに、失ったはずなのに、心が軽いです」「そうだな。ある種の人間は、心を軽くしてくれるものだ」「ある種の、人間?」「小生にとっての、ルチア。お前にとっての、ベアトリーチェ」 それは、ローラントにも否定する余地がなかった。「仮になにもかもが演技であり、勘違いや錯覚だったのだとしても……そこに抱いた感情には、偽物も本物もない」 ジャンジャックは、ページをめくる。「狂人を演じ続けられる者は、最早それは狂人であるように。同時に、お前の前で、英雄を演じきってくれるならば――その者は、お前にと

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  • ポンコツ悪役令嬢の観察記録 ~腹黒執事は、最高のショーを所望する~   第109話 悪役令嬢ダ・カーポ、修行延長?(前半)

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  • ポンコツ悪役令嬢の観察記録 ~腹黒執事は、最高のショーを所望する~   第106話 真夏の夜の悪夢、覚め遣らぬ

     かくして。 後の世に『ハンノキ事変』、あるいは『真夏の夜の悪夢』と呼ばれることになる一連の騒動は、こうして幕を閉じたわ。 王宮からの公式見解はこうよ。『異界より来たりし、魔王によるシュタウフェン王国への攻撃であった』 そこに、大国ガリアの思惑? とか、宰相派だとかシャーデフロイ派の対立とか、よくわからない陰謀はなかったという話になったの。 だから、操られた人はお咎めなし! そんな魔王による攻撃を、派閥を越えて手を取り合った若き令嬢令息……特に、『薔薇の乙女団』の活躍は目覚ましく、賞賛に値する勇ましき令嬢たち~なんて、華やかに語られたわね。「わたくしが贈った薔薇のブーケが、こんなことになるなんて。でも、男子生徒たちもボロボロになるくらい頑張ったのにね?」 それから、うちのシャーデフロイ家の精鋭。王太子バージル殿下が、護衛騎士団を率いて奮闘し、無事解決した。と。「もうっ、美味しいところはちゃっかり持ってこうとするんだから」 もちろん、被害は、甚大だったわ。王宮もあちこちボロボロ。貴族にもけが人は出たし、心の傷が大きかった人もいる。 ああ、そうね。洗脳されていた令息たちは、正気に戻った後、自らの行いに強いショックを受け、しばらくは療養が必要だとか。 けれど、驚くべきことに。 ――死者は、奇跡的にゼロだった。「嘘みたいね! あんな大乱闘だったのに!」 わたくしが、驚きの声を上げると、傍らに控えるイヅルは、涼しい顔で紅茶を淹れながら答える。「ええ。なんと、あの鉄拳カール殿も、重体でしたが一命を取り留めたそうで」「まあ、それは良かったわ! ……でも、背中から一突きまでされたのに?」「刺された剣は、内臓や重要な血管を避けていたようですよ」「……人間離れしすぎじゃない? ローラント殿の剣技」「『あの野郎、手加減しやがって!』などと、ベッドの上で悪態をつくくらいには、回復されているそうですから。我が家の秘伝ポー

  • ポンコツ悪役令嬢の観察記録 ~腹黒執事は、最高のショーを所望する~   第104話 幕間劇 ~ 騎士は茨の夢を見る(前半)

     振るう剣が、鉛のように重たいのは――情が絡みついているからだ。 深い、深い。泥沼に浸かるような夢。   ああ、ひどく懐かしい。あそこは、いつも冷たい隙間風が入って来るんだ。 ボイズ家の屋敷。  ガリアからの亡命者ゆえに、後ろ指を指される一族。いつも不平不満に満ち溢れていた、我が生家。 俺は、あの頃、単なる弱虫の少年だった。  皆の鬱屈した苛立ちは、いつも一番弱い俺に向けられる。「貴様のような腑抜けは、ボイズ家の恥だ!」 父の吐き捨てる声。異母兄たちの嘲笑。拳が、鞭が容赦なく振るわれる。  幼い俺は、うずくまり、嵐が過ぎ去るのを待つしかなかった。「ローラント! ああ、なんて

    last update최신 업데이트 : 2026-04-04
  • ポンコツ悪役令嬢の観察記録 ~腹黒執事は、最高のショーを所望する~   第103話 業火絢爛マエストラ、還るべき温もり

    「だが……ハンノキの王から、受けた恩義が……俺には」「忌々しいが……魔王は確かに、そなたが人生で最も苦しい時、一縷の救いとなったのだろう。だがな、ローラント。そなたがいなくては、こんな私は王子として格好がつかぬではないか」「……殿下」「だから、そなたが美しいと感じた人々が生きる、この傷だらけの世界で。この頑固者の弱さを……どうか、背負ってくれまいか。そう、友として」 バージル殿下は、手を差し伸べる。

    last update최신 업데이트 : 2026-04-04
  • ポンコツ悪役令嬢の観察記録 ~腹黒執事は、最高のショーを所望する~   第102話 あなたにとってのお星さまは、だあれ?

    「違うっ! 確かに、私の……“俺”の弱さのせいで、母さんは死んだ! 二度とはもう戻らない。だがっ!」「だが? ほほう、ハンノキの王の世界に連れ去れば、愛する者は傷つかずに済むとでも?」「そうだ! この世は、争いとエゴに満ちている。肉体がある限り、苦しみはなくならない! どんなに、心が美しくとも、いずれは傷ついて――」「待つがよいっ!」 すかさず、横合いからバージル殿下が隙をつき、一太刀! 切り払ったのは、ローラント殿の半身を覆い尽くさんとする、黒い茨。「私は

    last update최신 업데이트 : 2026-04-04
  • ポンコツ悪役令嬢の観察記録 ~腹黒執事は、最高のショーを所望する~   第51話 私はあなたを見ないと気分が悪くなる(後半)

    「でね、ベアトリーチェ様ー! 聞いてくださいよー! 今日の歴史学の講義でですね、先生が!」 それから、何日経っても……変わらない。 すっかり友達だと言う顔をして。今日も、わたくしの隣に座ると、楽しそうにおしゃべりを始めるルチア。「へえ、それで?」「それでですね! ツェツィちゃんが、うとうと……なんと居眠りしてて! 先生にはバレなかったけど、指摘したらすっごく可愛い顔で、むくれてたんですよ!」 口から語られるのは、宰相令嬢ツェツィーリア様の、可愛らしい日常。本当に

    last update최신 업데이트 : 2026-03-24
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